1,はじめに

科学技術の進歩に伴い誕生した波長可変光源は、分光分析や光学部品の特性評価などで活用されている革新的な技術です。
波長可変光源は波長制限を柔軟にできるため、特定の波長のみを生成する従来型のレーザーにはなかった安定性や用途の多様性を備えています。
本記事では、波長可変光源と従来型のレーザーの違い、活用例について解説します。

2,波長可変光源(レーザー)とは

波長可変光源とは、特定の波長に固定されず、主に波長可変レーザーを用いて自在に波長を変化させられる光源のことです。
波長を任意に調整できる特性から、チューナブルレーザーと呼ばれることもあります。
波長可変光源は大きく分けて2種類あります。一つは波長選択素子にグレーディングやフィルタを用いて光源の波長を可変させるタイプ、もう一つは光源自体の波長を変化させるタイプです。
波長可変光源の使用用途は、研究・産業など多様であり、様々なメーカーから異なる特徴を持った製品がリリースされています。

(製品紹介)
〇高分解能型波長可変光源
 KLS-601Aシリーズ

〇標準型波長可変光源
 KLS-201Aシリーズ

3,従来型のレーザーと波長可変光源の違い

従来型のレーザーと波長可変光源の決定的な違いは、発振波長の可変性です。
従来型のレーザーは、特定のレーザー媒質によって発振波長が固定されており、レーザー媒質の原理や物性に基づいています。
波長可変光源の場合、発振する光の波長を自在に変更できるのが大きな特徴です。自由電子レーザー・色素レーザー・波長可変式半導体レーザーなどの様々な方式で任意の波長に調整でき、多岐にわたる用途で活用されます。
従来型のレーザーは特定の波長に特化したアプリケーションに適しているのに対し、波長可変光源は波長制御の柔軟性が必要な場面で使用されます。

4,波長可変光源の種類

波長可変光源は、主に自由電子レーザー・色素レーザー・波長可変式半導体レーザーの3種類に分けられます。

4-1,自由電子レーザー(FEL)

自由電子レーザーとは、電子が自由に移動する仕組みを利用したレーザーのことです。
加速された電子が特定範囲の磁場を蛇行する際、シンクロトロン放射光が発生します。そのシンクロトロン放射光を共振器内で増幅させて、非常に強いレーザー光を放出する仕組みです。
自由電子レーザーの波長調整範囲は極めて広範であり、主に医学・科学などの研究分野で活用されています。

4-2,色素レーザー

色素レーザーは、固体・液体として存在する有機色素をレーザー媒質としています。
色素レーザーの原理は、色素分子に光エネルギーを供給して励起させて、それによって発振を起こすというものです。この特性から広範な波長領域での発振が可能であり、波長の可変性に優れています。
比較的低いコストで実現できるため、研究室や産業現場で広く使用されているレーザーです。

4-3,波長可変式半導体レーザー

波長可変式半導体レーザーは、半導体素子を利用して発振するレーザーであり、外部から波長を制御して自在に変化させられます。
通常、外部に配置されたグレーティングやフィルターなどの波長選択素子を用いて、波長を変化させます。これにより、レーザー発振の波長を連続的に調整することが可能です。
波長可変式半導体レーザーは波長の制御が容易であり、高速な波長スイープが可能なことから、小型化・低コスト化しやすいのがメリットです。
これらの特性から、幅広い光学応用や通信技術、医療分野などで重要な役割を果たしています。

5,グレーディングやフィルタの有無で異なる波長可変光源の特徴

波長可変光源は、波長選択素子にグレーディングやフィルタを用いたタイプと、光源自体の発光波長を変化させるタイプがあります。
それぞれの特徴について詳しく解説します。


・波長選択素子にグレーディングやフィルタを用いたタイプ
波長選択素子にグレーディングやフィルタを用いたタイプの波長可変光源では、光源自体が特定の波長を出力します。その出力波長をグレーディング(スリットやフィルター)を用いて絞り込み、特定の波長帯域を選択する仕組みです。
このタイプの波長可変光源は、高精密に波長を調整できるため、波長範囲をきめ細かく選択して生成したい研究用途などで重宝されています。
広波長帯域・極小発光点・超高輝度、そして高い安定性を持った波長可変光源ですが、光源自体の発光出力は変わりません。


・光源自体の発光波長を変化させるタイプ
グレーディングを使用しない波長可変光源では、光源そのものにある発光波長を変化させます。
例えば、外部からの制御によって、レーザーの発振波長を連続的または離散的に調整可能です。
このタイプの波長可変光源は、スペクトルの特定の領域を調査したり、特定の波長での実験を行なったりする場合に広く使用されます。

製品紹介:自動波長可変フィルタモジュール(AWVF)
製品紹介:可視光波長可変モジュール VTFM/FC
製品紹介:カセット型波長可変フィルタモジュール
製品紹介:透過/反射フィルタモジュール
製品紹介:波長/半値幅可変フィルタモジュール

6,波長可変光源の活用

波長可変光源は、光源の波長や強度などの制御が必要となる実験・観察の研究分野、光学部品の特性評価や光ファイバセンサの動作・性能を検証などの産業分野で主に活用されています。

(波長可変光源の研究用途)
• 分光分析
• 生体リズムの研究
• 生産性の研究
• 蛍光観察用

(波長可変光源の産業用途)
• 光学部品の特性評価
• センシングデバイスの評価
• 光ファイバセンサの伝送試験
• 高集積回路の評価
• 膜厚測定

7,まとめ

今回解説した波長可変光源は、波長が単一である従来型のレーザーとは異なり、外部から波長を柔軟に変化させられる光源です。
広範囲の波長を生成できるため、研究、産業分野などの分光分析・光学部品の特性評価等、幅広いシーンで活用されています。

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